丸岡城は貴重な体験ができる場。次世代に魅力を伝えることが大切。

町づくりの仲間たちから「先生」と呼ばれ親しまれている水﨑さんは、元学校の先生です。2018年4月から丸岡観光ボランティアガイド協会長に就任しました。丸岡城で観光ガイドを始めることになったきっかけや、丸岡の未来のために次世代に伝えたいことをお聞きしました。

丸岡観光ボランティアガイド協会 会長 水﨑亮博(あきひろ)さん(78歳)

活動内容について

尊敬する宮本先生の意思を継ぎ、
愉快な仲間と丸岡を盛り上げる。

「ガイドの仲間は、みんな個性が強くて面白い。プライベートの話はあまりしないけれど、丸岡城を軸に集まった仲間だから通じ合えるんでしょうね」

ガイド仲間から「先生」と呼ばれている水﨑さん。元学校の先生で、退職後は地元である丸岡町長畝地区でさまざまな地域活動に参加してきました。若い時から郷土愛が強く、地域の課題に積極的に向き合うタイプだったとか。とはいえ、丸岡城は地元から少し離れたところにあります。水﨑さんが観光ガイドを始めたのは、教員時代の上司である宮本先生に誘われたことがきっかけでした。

宮本先生は生物の先生でしたが、退職後に歴史の勉強を始め、丸岡の史学に大きな貢献を果たした方です。宮本先生の影響を受け、水﨑さんも丸岡城について勉強するようになり、宮本先生がボランティアガイドを立ち上げる際に一緒に活動を始めました。

「この歳になっても尊敬する人が周りにいるというのは幸せなことです。宮本先生の活動を間近で見てきた者として、皆が尊敬する先生の活動をしっかり引き継いでいきたいですね」

丸岡観光ボランティアガイド協会の立ち上げに尽力された宮本先生が一昨年に亡くなり、2018年4月に水﨑さんが会長に就任しました。尊敬してやまない宮本先生の後を引き継ぎ、会を取りまとめています。

活動動機

次世代に魅力を伝えることが大切。
若い時の経験は貴重な宝です。

丸岡城は郷土自慢のシンボルですが、水﨑さんは丸岡城にはそれ以上の魅力があるということに気がついたそうです。

「丸岡城は単なる自慢だけでなく、地域の核となるものだと気がつきました。そうしたものが地域にあることは幸せなことだし、それを若者や子どもたちに伝えていきたいです」

ボランティアガイドが発足して5年。活動を通して最も痛切に感じたことは「市民の理解」の必要性でした。観光客だけでなく市民に知ってもらい、理解してもらうことが不可欠だと感じています。それは丸岡城だけでなく、丸岡町の未来づくりについても共通して言えることであり、市民の理解を得ながら作っていく必要があると感じるそうです。

「これから地域の未来を担う小中高生に理解を深めてもらうことは、特に大切です。そのため、今年から平章小学校だけでなく丸岡町の全小学校で、丸岡城での校外学習を積極的に行っています」

子どもたちの地域教育に重点を置いた活動は、さすが元学校の先生といったところ。市民の会のつながりから地元の教員である竹吉先生に出会い、同じ考えを持つ仲間として、子どもたちの理解を深める活動を広げています。

「丸岡藩は取り立てて目立つ藩でもなかったけれど、教育に力を入れていました。私塾が多い地域で、特に江戸末期は武家以外の子どもたちの教育も盛んでした。丸岡は教育を大切にする風土が根付いている地域なのだと思います」

丸岡城があることで普通はできない体験ができる点も魅力の一つです。若い時の経験は貴重な宝物。丸岡城の価値を次世代に伝えることが大切だと力を込めます。

若者の理解を深めるために。丸岡は教育の街。
現場の声を直接聞くことで
地域の課題が見えてくる。

丸岡城に訪れる人の声を直接聞くことができるのは、ガイドの特権でもあります。「土産物屋や食事をするところが少ない」「駅からのアクセスが悪い」「道路の案内板が分かりづらい」など、さまざまな声を耳にすることで、地域の課題が見えてくるそうです。

「丸岡城天守を国宝にする市民の会ができたことでこれらの課題を意見できるようになりました。レンタサイクルの導入や資料館のオープン化を提案したいと思っています」

若い世代に向けた活動に力を注ぎ、現場の声を受け止めて課題を解決していく水﨑さん。丸岡の未来に対しては、どのように考えているのでしょうか。

「町づくりは、いかに地域を発展させるかに議論が集中しがちですが、丸岡は現時点で十分に魅力ある町だと思います。住みやすく、民度が高く、農業があり、豊かな地域です。自分たちが暮らす町を守りながら、内側を充実させていくことが大切だと思っています」

丸岡城をはじめとした地域の資源を大切に守りながら、次世代に魅力を伝え、かけがえのない経験をする場を作っていくこと。それこそが丸岡の未来を明るくしていくことにつながっています。

水﨑さんに丸岡城の魅力をたずねると「まだ謎が多く、どれだけ勉強しても新しい発見があるところ」という答えが返ってきました。それはまるで、丸岡の町そのもの。水崎先生はこれからも、丸岡城や地域の新しい魅力を発見し教えてくれそうです。