いま丸岡高校がアツい! 若者と地域をつなげるパイプ役。

いま丸岡高校がアツい! 2019年4月、丸岡高校に新しく誕生した地域恊働部が注目を集めています。地域に密着したユニークな活動を展開する彼らが目指すのは、社会にイノベーションを起こす地域リーダー。地域と教育をつなげ、地域の未来を変える仕掛け人、竹吉先生のインタビューを行いました。

福井県立丸岡高校教諭・地域恊働部アドバイザー 丸岡城天守を国宝にする会 理事 竹吉睦さん(61歳)

活動内容について

高校生も「市民の一人」。
地域リーダーを育てたい。

SNSやインターネットで丸岡の魅力を発信したり、地域活動に参加したり、そば打ちを学んだり。丸岡高校地域協働部は、ユニークな地域活動に取り組む高校の部活動です。彼らが目指すのは、社会にイノベーションを起こす地域リーダー。高校生の活動が、いま少しずつ丸岡の大人たちを変えています。

「彼らに本気で担ってもらわないと地域は衰退します。大人たちが決めたことを将来子どもたちにやらせるのではなく、次世代を担う彼らが話し合いに加わり、考え、決めていくことが大切です」

そう語るのは、地域恊働部の仕掛人である竹吉さん。長年、日本史の先生として県内の高校で教鞭をふるい、一昨年、坂井高校の校長職を最後に定年退職しました。その後、丸岡高校の教諭として復職。地域のリーダーを育てる場として地域恊働部を立ち上げました。

20名の部員たちは「市民の一人」としてさまざまな地域会議に参加しています。高校生も一市民。大人に交ざり地域の会議に参加し、意見やアイデアを出しています。

「彼らが『自分たちの地域を自分たちが担っていかなければ』という当事者意識を持つことが大切です。地域が彼らを受け入れることで子どもたちの意識が変わり、それが将来の進路選択につながります。部員はみんな名刺を持っていて、会議の場で大人と名刺交換するんですよ」

これからの地域を担うのは今の大人ではなく子どもたち。それなのに、なぜ子どもたちが地域の話し合いに出ないのか。世代を超えたコミュニケーションが必要ではないか。そうした竹吉さんの思いが地域や学校を動かしました。そこには、高校生たちに大きな愛情と信頼を抱く、竹吉さんの教育者としての信念が見て取れます。

高校生も一市民。この意識が丸岡の未来を大きく変えようとしています。

地域と学校のパイプ役になり、
地域に求められる高校にしたい。

竹吉さんは以前から、定年後は地元の丸岡で地域と子どもたちのパイプ役を担いたいと考えていました。そして丸岡高校で復職するとすぐに、これまで温めていた構想を実行しました。

その一つが市民の会も後援している「小中高丸岡城サミット」です。県外にも誇れる丸岡城が近くにあるのに、子どもたちは丸岡城のことをあまり知らない。そんな現状をなんとかしようと地域や教育現場に働きかけ、丸岡町内の小中高で探求授業を行い、発表の場を設けました。

「これからの世代にどうやって地域の魅力を伝え、丸岡城を中心にどんな地域づくりを考えてもらうか常々考えていました。高校生だけに伝えても難しいので、小中学生に教えることが大事です」

教職のかたわら、丸岡古文書を読む会の講師を勤めるなど、竹吉さんは長年にわたり地域活動に参加してきました。20代後半から地域と関わってきたため、地域と教育、社会と学校の垣根が低く、互いの課題が見えるといいます。だからこそ、地域と学校をつなげるパイプ役が自分の役目だと感じているそうです。

最近では地域住民が学校に相談したい時の窓口になることも多いとか。また、サミットのほかにも「丸高カレッジ」という市民公開講座や「小中学校丸岡城自由研究コンテスト」など、いろんなプランを次々に打ち出して実践しています。

「子どもたちの翼を折らずに地域の種を蒔きたい。地域恊働部や丸高カレッジを通して、地域に求められる高校にしていきたいです」

地域の課題はアイデア不足。
楽しみながらやることが大切。

竹吉さんが生まれ育った家は、丸岡城のすぐそばにあります。丸岡城は子供のころの遊び場でした。けれど丸岡城の魅力を再認識したのは大人になってから。知れば知るほど、その魅力にひかれていったそうです。

「誇りを超えて、もう『愛しさ』ですね」

丸岡城はご自身にとってどんな存在かと尋ねると、この言葉が返ってきました。もはや愛なのですね!市民の会に入ってから、多くの人が時間をかけて丸岡城の活動をしていることに感心したそうです。

「地域における次世代への視点がさびしいので、私は教育分野が担当です。あとは歴史資料担当。地元の人が丸岡城に対してもっと誇りを持てるようにしたいです」

そのためにも城の一部を復元し、天守閣だけでなく城郭としての魅力を再現したいと語ります。そして「僕たちのお城だ!」とみんなが胸をはれるようになることが一つの目標です。

「県内各地の高校に赴任し、さまざまな町づくりを見てきました。そこで感じたのはアイデア不足。閉ざされた活動になりがちなので、外の活動を参考にしながら楽しんでやっていくことが大切です」

丸岡高校地域恊働部の生徒たちを見ていると、みんな楽しそうに目をきらきらさせながら活動に取り組んでいました。これまで大人では思いつかなかった新しいアイデアを次々に発信しています。彼らを見ていると、丸岡の未来は明るいと感じます。

竹吉先生の頭のなかには、まだ新しいプランがあるようですよ。これからも丸岡高校の動きに目が離せません。