戦国時代がよみがえる! 丸岡城を彩る、伝統的な鎧づくり。

風格ただよう華やかな鎧(よろい)。これまで、城のまちまちづくり協議会の有志が作った鎧は30領を数えます。丸岡城下で催される「古城まつり」を盛り上げようと、6年前から鎧づくりが始まりました。2017年の古城まつりを前に製作が大詰めを迎える作業場で、鎧に込めた思いをお聞きしました。

城のまちまちづくり協議会 さくら部会 高嶋信博さん(57歳)藤澤清徳さん(74歳)

古城まつりを盛り上げ、
丸岡城の国宝化に一役買いたい。

台紙1385枚、正絹の組ひも100メートル、製作時間200時間。大量のパーツと地道な作業を重ねて、丸岡の鎧は作られています。製作しているのは、城のまちまちづくり協議会の高嶋さんと藤澤さん。もう1人のメンバー3人で製作しています。今年作っているのは「腹巻鎧」と呼ばれるタイプで、頭には兜ではなく烏帽子を被る上級武士の鎧です。これまでの「二枚胴」タイプに比べて時間もパーツ数も2倍かかる鎧を、今年は5領製作しました。

「気が遠くなるような細かな作業です。力も必要なので、指が痛くなります」

「これまでの二枚胴とは作り方が違うので、今年5月に鎧師の先生を再び招いて、作り方を習いました。でも、こんなに大変やとは思わんかったなあ」

そう話しながらも、手を休めずに作業を続けるお二人。10月の古城まつりに間に合わせようと、仕上げの作業に力が入ります。

鎧づくりを始めたのは2011年。古城まつりを盛り上げようと、城のまちまちづくり協議会の事業の一貫としてスタートしました。

「鎧を着てボランティアガイドをできないかと模索していたころ、京都の『うさぎ塾』を知りメンバーに伝えました。すぐに皆で視察に行き、その後、鎧師の先生を丸岡に招いて公民館で鎧づくり講座を開講しました」

『うさぎ塾』は平安・鎌倉時代から続く鎧づくりの伝統技法をいまに伝える工房です。講座は15回に分けて1年にわたり鎧づくりを学ぶもので、公募で集まった個人にくわえ、協議会メンバーも参加しました。そして講座で作った二枚胴の鎧3領を、翌年の古城まつり「歴史めぐりラリー」にて活用。その鎧が好評で2年目にはさらに2領を作り、3年目には坂井市の委託事業として製作。市長をはじめとした関係者が古城まつりの五万石パレードで着用しました。その後も少しずつ鎧の数を増やし、2016年には福井市の越前時代行列に有志が鎧を着て参加するなど、丸岡城国宝化に向けたPR活動にも活用しています。

「鎧を着て城下を歩くと、戦国時代にタイムスリップしたような気分になりますよ」

丸岡城を背景に、甲冑を身につけて歩く姿はまるで戦国武士。威風堂々とした戦国パレードが、丸岡城の歴史ロマンを今に伝えます。

歴史をひも解くと見えてくる。
見慣れた風景こそ、丸岡の宝。

「鎧を手づくりしたことで、古城まつりや丸岡城国宝化に向けたPRの幅が広がりました。また、戦国時代に関心を持つ人々の輪が広まり、鎧のほかにも火縄銃を作るなどの動きが見られるようになりました」

丸岡には、戦国時代の資料がほとんど残っていません。そのため、自分たちで城文化を伝える資料を作っていくことが重要です。鎧をきっかけに丸岡城に興味を持つ人が増えて、そこから丸岡城国宝化や観光事業など、丸岡城を中心としたまちづくりを広めていきたいと高嶋さんは語ります。

高嶋さんの本職はプログラマ―。仕事の合間をぬって鎧を製作しているため、大変なこともあります。それでも鎧づくりに精を出すのは、ふるさとへの熱い想いが根底にあるからこそ。

「丸岡を離れ県外で暮らしていた時、丸岡城について質問されたのですがうまく説明できなくて……。子どものころから丸岡城を見て育ったのに何も知らない自分に、ショックを受けました。Uターンしてからまちづくり協議会に入っていろいろ教わり、歴史をひも解くことで丸岡の魅力が見えてきました」

幼いころから見慣れていた丸岡城のある風景ですが、当たり前すぎて丸岡城について何も知らなかったそうです。学校でも近所でも、丸岡城について学ぶ機会はありませんでした。けれど、10年ほど前から地元の平章小学校で、丸岡城の歴史を学んだり、お城の床を磨いたり、さまざまな活動が始まっています。

「歴史を学び、丸岡城を知ることで、町の見え方は変わってきます。彼らが大人になるころ、町はもっと変わるかもしれませんね」

鎧づくりをきっかけに、見直され始めた丸岡城の歴史文化。その輪が少しずつ大きくなり、丸岡の魅力づくりへと繋がってきています。

昔のような賑わいを取り戻す。
目指すのは、城下町拠点づくり。

「10年前は丸岡城への関心が薄かったけれど、鎧づくりを通して関心が高まってきたと感じています」

そう話す藤澤さんは、最初に鎧づくり講座を行った公民館の元館長。今でも仲間たちからは「館長」と親しみを込めて呼ばれています。元々は旧丸岡町職員で、長年地域づくりに関わってきました。組織づくりにも長けており、まちづくり協議会の立ち上げにも携りました。

「いまの丸岡町は人通りも少なく寂しいですが、昔のような賑わいを取り戻したいですね。そのためには丸岡城を拠点としたまちづくりが必要です。まちづくり協議会が発足した時に、丸岡城を中心としたまちづくりを進めていくことを決めました。丸岡城は、活性化の核となるものだと思います」

地域活性化のために、何が必要なのか。地域を愛し、地域と共に歩んできた藤澤さんだからこそ、見えていることがあります。たとえば丸岡城の周りを掘ってお堀を復元するなど、そうした大胆な事業も実現できたらと思っているそうです。

「城下町散策を楽しめる景観づくりと観光拠点づくりを進めたいです。そこで鎧をレンタルして、戦国体験してもらえるような仕組みを作りたいですね、館長」

「鎧を着る人が増えて、そこから鎧づくりに興味を持ってもらい、作り手を増やしたいですね。そうした活動が国宝化や観光化への動きにつながり、丸岡城を中心としたまちづくりを伝えていけたらと思っています」

自分たちで鎧をつくりまちづくりの輪を広げることで、丸岡城の歴史文化を広めて城下を盛り上げていく。そうした信念のもと作られている丸岡城の鎧。今年、新たに出来上がった5領の鎧が、古城まつりをさらに盛り上げてくれそうです。