丸岡城がもっと楽しくなる。ボランティアガイドの醍醐味。

丸岡城に続く階段を上っていくと、青色のスタッフジャンバーを着ている人を見かけます。彼らは丸岡城のボランティアガイドで、丸岡城の歴史文化を分かりやすく解説してくれます。約30人が登録するボランティア団体をまとめる副会長の大霜さんに、ガイドの魅力とこれからについてお話を伺いました。

丸岡観光ボランティアガイド協会 大霜徹夫さん(73歳)

丸岡城を知り尽くすことは難しい。
だからこそガイドは奥深く面白い。

「ようこそ丸岡城へお出でくださいました」

日本最古のお城をひとめ見ようと訪れる観光客に、軽妙な語り口で話しかける大霜さん。ボランティアガイドのユニフォームである青いジャンバー姿で、城内を案内して回ります。

「お客さんの笑顔や『ありがとう』の言葉、『ガイドさんがいてくれて助かったよ』と言われることが何よりの喜びですね。大きなやりがいを感じます」

そう言って笑う大霜さんですが、ガイド歴5年以上となった今でも「うまく話せた」という満足感はなかなか得られないといいます。歴史文化は、視点が変われば見え方が変わるもの。案内するたびに新しい発見があるため、丸岡城を知り尽くすことはできないと感じるのだそうです。丸岡城のことを知れば知るほど、自分の解説に自信がなくなっていくのだとか。

「だからこそ、ガイドは面白い。丸岡城は古いので謎が多く、そのぶん研究する楽しさも大きい。いつも新鮮な気持ちで学び続けることができるから、老化防止にもなってますよ」

大霜さんは話す内容を忘れないように、週に1度は予約団体を担当するように心がけています。ガイドは無償ボランティアで、当番制ではありません。予約が入ると掲示板に予約表が貼られ、時間のある人が名前を書き込んでガイドを担当する仕組みです。年間300件ほど団体予約を受け付けていますが、ガイド料は無料です。そのためガイドに興味はあるが自信がない、という人も気楽に始められます。また、お客さまの時間に合わせて柔軟に内容を変えられるというメリットもあるようです。

「難しく考えず、最初は『写真でも撮りましょうか』と声をかけることからスタートすればいいんです。ボランティアガイドを始めると、世界が広がりますから」

いまは空前のお城ブーム。ガイドの需要は年々高まっています。一緒にガイドする仲間を、毎年募集しているそうです。

地元の人にこそ知ってほしい。
ガイド活動を通して気づいたお城の魅力。

丸岡観光ボランティアガイド協会が発足したのは平成24年4月1日。丸岡城を訪れる観光客が増えて「おもてなし」が必要との声が高まり、観光協会が主体となって平成23年末にボランティアを募集しました。

大霜さんは年間800冊もの本を読むほどの愛読家で、とりわけ歴史や文学が大好き。定年退職後、歴史や文学を軸に地域づくりに関わり始め、いくつかの団体に所属していました。その一つである丸岡五徳会の仲間に誘われたのが、ガイドを始めるきっかけとなりました。

「さまざまな活動に参加してきましたが、ガイドはなかなか大変です。一日一日が勉強ですから。どうやら、好奇心旺盛で飽きっぽい私に向いているようです」

67歳でスタートしたガイド活動ですが、もともと歴史文化が好きな性格に合っていたようです。オリジナル写真ファイルを作成しガイドの補助資料にするなど、積極的に活動に参加するようになりました。協会では丸岡城ガイド本を発行し販売していますが、この本もガイド仲間と一緒に楽しく作成したものです。

これほど熱心な大霜さんですが、数年前までは丸岡城は「あって当たり前」の存在で、地域の宝という意識はそんなにありませんでした。ガイド活動を通して愛着が生まれ、今では地元の人に素晴らしい城があることを知ってほしいと願っています。

「お城は地域の中心的存在であり、他の歴史建造物に比べて関心を持ちやすく、感動しやすいもの。丸岡城の歴史を振り返ると、地域の成功者など多くの人が守ってきた城であることが分かります。これからも地域で守っていけるといいですね」

城下町整備や登城の日を作り、
ファンを増やしていきたい。

丸岡城を核に地域が発展していくためには、丸岡城の魅力アップを図り、まずは地元から盛り上がらなければなりません。2年前に発足した「丸岡城の会」では、2016年にお堀や城門、町並み整備を盛り込んだ要望書を行政に提出しました。そこには地元の人に関心を持ってもらう方策として、丸岡城登城の日制定や小学生への無料ガイド券配布、桜まつりの盛り上げなどから始めようと提案しています。

「観光客を案内していると、城下町整備の必要性を痛感します。丸岡城周辺には見どころが少ないため、案内するのが難しいのです。食事、宿泊、土産品、グッズ販売など、さまざまな角度から観光客の滞在時間を長くする必要があります」

地元の人に関心を持ってもらうために、ガイドとしてもできることがたくさんあると話す大霜さん。丸岡城を見学する機会を増やすため、案内役を買って出たいというのもその一つです。また、大霜さんは絵本読み聞かせのボランティア活動にも参加しており、時間が余ると自作の「丸岡城日本一物語」を子どもたちに話して聞かせています。ふるさとの歴史遺産を知ってもらい、丸岡城のちびっ子ファンを増やしたいという思いがあるからです。

県内外から訪れる観光客だけでなく、地域の人々にも丸岡城の魅力を伝えながら、これからも地域を盛り上げていきたいと話してくれました。