お城ファンと地域をつなぐ 新たな交流拠点「城小屋マルコ」

丸岡城を中心とした町づくりが進むなか、2020年春に新しいスポット「城小屋マルコ」が誕生します。丸岡城のふもとにある古い木造2階建の空き家をリノベーションしたミニ資料館で、お城ファンと住民の交流の場として活用されます。この空間を盛り上げていく一人である石森さんにお話を伺いました。

特定非営利活動法人 まちづくりカレッジSakai 理事長、福井人権用語委員協議会、丸岡城天守を国宝にする会 正会員 石森則子さん(62歳)

活動内容について

お城ファンの聖地を目指す。
高校生も「市民の一人」。
地域リーダーを育てたい。

2020年4月1日、丸岡城天守のふもとにあるお天守公園南側に「城小屋マルコ」がオープンします。丸岡城をはじめ全国各地のお城の資料が閲覧できるミニ資料館となっていて、お城ファンの聖地を目指します。

土壁がむき出しになったオシャレな吹き抜け空間は、古い木造2階建の空き家をリノベーションして作られました。奥のカウンターはカフェコーナーとなっていて、石森さんはこのカフェを担当します。

「地域住民とお城ファンの交流の場だけでなく、旅人の荷物預かり所のような役割も担っていきたいです」

石森さんは他に仕事を持っているため、出社前の早朝にカフェを手伝う予定です。今は空いた時間に手伝うスタイルですが、ゆくゆくはどっぷりマルコに浸かっていきたいのだそう。でも、すでに仲間に頼られる存在になっています。

石森さんが当会に入ったのは1年前で、丸岡との関わりが濃くなったのはここ12年のことです。丸岡町在住ですが新興住宅地に住んでいて、勤務先は福井市内なので、それまで地域に関わる機会がありませんでした。そんな石森さんが、なぜ城小屋マルコに関わることになったのか。そこには持ち前の好奇心と、丸岡だけでなく坂井市全体の地域づくりを考える広い視点がありました。

いろいろな人に出会える。
だから町づくりは面白い。

定年退職を1年後に控え、その後の人生について考えていた時に、石森さんは坂井市の「まちづくりカレッジ」を知りました。坂井市が開く1年間18回コースの町づくり講座の募集で、石森さんは1期生となりました。

「町づくりって何だろうと考えていたのですが、講座を通して、ちょっとしたことでも町づくりなのだと分かり、実際にやってみることにしました」

まずはやってみよう。持ち前の行動力で動き始め、地区の女性に声をかけて4人で近所の公園に花を植え始めました。そして、仲間が「城のまちまちづくり協議会」のさくら部会に入っていたので、その繋がりから石森さんも参加することになりました。

「こうした活動を通じて、定年後に地域について考える人が多いことを知り刺激を受けました。それで丸岡の地域事業を調べて市民の会を知り、寄付をして賛助会員になりました」

やがて定年を迎え、時間に余裕ができた石森さんは、さらに活動の範囲を広げていきます。町づくりカレッジの修了生が町づくりプランを提案する「プランミーティング」にも参加し、町づくり事業をつなぐプラットフォームづくりのためのNPO立ち上げを提案しました。そして2019年3月には実際にNPO法人まちづくりカレッジSakaiを設立し、理事長に就任しました。

こうした活動のなかで当会を知り、その縁で「丸岡城周辺賑わいのまちづくりビジョン」のワークグループに参加。こうして地域と関わりを持つようになっていきます。

「ワークグループに参加して、皆さんがいろいろな勉強をしていることを知りました。アイデアも面白かった。それで興味を持ち、自分から市民の会に入りたいと申し出ました」

もともと人と接するのが好きで好奇心旺盛だという石森さんは、以前から仲間と福井を深く知るイベントを展開したり、異業種交流に参加したり、積極的に活動していました。そんな石森さんにとって丸岡でのビジョン作りはとても刺激的で、深く関わりたいと思ったそうです。

「町づくりはいろんな人に出会えて、今まで持っていなかったものを蓄積できるので楽しいですよ」

町づくりはイベントなど華やかな活動が目立ちますが、実際には書類作りや経理などの裏方作業がとても大切です。長年、事務職として働いてきた石森さんにとって資料作りや経理もお手のもの。丸岡の町づくりにとっても、心強いメンバーの加入でした。

みんなで一緒に学びながら、
丸岡城に訪れる人をもてなしたい。

「素晴らしい『まちづくりビジョン』を作っているのに知らない人が多いですよね。私も知りませんでした。一般市民に伝えることが必要です。坂井市は情報発信が上手くないので、変えていきたいです」

丸岡に限らず、他の町づくりにも同じことが言えると石森さんは話します。例えば町づくり協議会に若い子がいないという話をよく聞きますが、若い子が入りやすい入り口を作ってあげることが必要です。人口減少が進むなか、どうやって地域を育て、関係人口を増やしていくのか。町づくりカレッジで生まれたアイデアをどう地域に落とし込んでいくのか。石森さんは大きな視点で町づくりを考えています。

「地道にやることが重要です。いきなり関わる人を増やすことはできません。時間はかかりますが小さなことから始めることで、自然と人が集まるようになる。城小屋マルコをその拠点にしたいですね」

お城ファンだけでなく地域の人、年配の方や子育て世代、中高生の親など、普段は地域づくりに関わりのない人も集まれるような賑わいの場にしたいと石森さんは考えています。さまざまな人が互いに教えあい、学べる場を目指したい。丸岡の町づくり以外にも、坂井市人権擁護委員も務めている石森さんならではの視点です。

「丸岡城は素朴なお城ですが、たくさんの人を魅了しています。みんなで一緒に学びながら、城小屋マルコをコミュニティの場として活用し、丸岡城を訪れる人たちをもてなしたいですね」

実は石森さん、剣舞の舞い手という顔も持っています。偶然にも剣舞の師匠が「丸岡城」という曲を作っており、2019年にはその曲も披露しながら百口城主を剣舞でおもてなしをする機会も得ました。丸岡の町づくりを裏方として支えながら、今後はおもてなし部隊としての活躍も増えていきそう。(丸岡城 百口城主プロジェクト

「私は人に恵まれてきました。町づくり=人。いろんな人と知り合えることが私の原動力です。人に出会い、学び、世界を広げていきたいですね」

人から学ぶことが好きという石森さん。まだまだ多くのことを学び取り入れながら、城小屋マルコを拠点に新しい賑わいを生んでくれそうです。